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最高裁判所第一小法廷 平成3年(行ツ)91号 判決

上告人

旧商号ネッスル株式会社

ネスレ日本株式会社

右代表者代表取締役

ハンス ユルゲン クレット

右訴訟代理人弁護士

青山周

被上告人

中央労働委員会

右代表者会長

萩澤清彦

右指定代理人

山口俊夫

外三名

右補助参加人

ネッスル日本労働組合

右代表者執行委員長

笹木泰興

右補助参加人

ネッスル日本労働組合東京支部

右代表者執行委員長

松村定春

右補助参加人

ネッスル日本労働組合島田支部

右代表者執行委員長

大石正雄

右三名訴訟代理人弁護士

古川景一

伊藤博史

杉山繁二郎

佐藤久

阿部浩基

岡村親宜

藤原精吾

野田底吾

宗藤泰而

筧宗憲

市川守弘

主文

原判決のうち別紙(一)及び(二)記載の各再審査命令部分に関する部分を破棄し、第一審判決のうち右各再審査命令部分に関する部分を取り消す。

被上告人のした別紙(一)及び(二)記載の各再審査命令のうち同記載の各部分を取り消す。

上告人のその余の上告を棄却する。

訴訟の総費用はこれを六分し、その一を被上告人の、その余を上告人の負担とし、参加によって生じた訴訟の総費用はこれを六分し、その一を被上告補助参加人らの、その余を上告人の負担とする。

理由

上告代理人青山周の上告理由第一について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。右認定に係る事実関係の下において、上告人会社による団体交渉の拒否が労働組合法七条二号の不当労働行為に当たるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。

同第二の一について

使用者と労働組合との間にいわゆるチェック・オフ協定が締結されている場合であっても、使用者が有効なチェック・オフを行うためには、右協定の外に、使用者が、組合員の賃金から組合費相当額を控除し、これを労働組合に交付することにつき、個々の組合員から委任を受けていることが必要であって、チェック・オフ開始後においても、組合員は使用者に対し、いつでもチェック・オフの中止を申し入れることができ、右中止の申入れがされたときには、使用者は当該組合員に対するチェック・オフを中止すべきものである(最高裁平成三年(オ)第九二八号同五年三月二五日第一小法廷判決・裁判集民事一六八号下一二七頁)。

原審の適法に確定したところによれば、以下の事実が明らかである。(1) 上告人会社には、もともと単一のネッスル日本労働組合(以下「旧ネッスル労組」という。)が存在したが、同組合の内部抗争の結果、共にネッスル日本労働組合を名乗る二つの労働組合及びそれぞれの支部が独立した労働組合として併存するに至った(被上告補助参加人であるネッスル日本労働組合を以下「参加人組合」といい、参加人組合と同名ではあるが別の組織であるネッスル日本労働組合を以下「訴外組合」という。)。(2) 参加人組合所属の組合員らは、従来、旧ネッスル労組と上告人会社とのチェック・オフ協定に基づき組合費のチェック・オフを受けていたが、参加人組合並びに被上告補助参加人ネッスル日本労働組合東京支部及び同島田支部(以下「参加人両支部」という。)は、独立した労働組合としての存在が認められるに至る直前から、所属組合員の氏名を明示してチェック・オフの中止及び控除された組合費相当額の返還を要求したり、各組合員の社長に対する中止申入書及び本部執行委員会に対する委任状を添えてチェック・オフ中止の申入れをしたりしてきている。(3) 上告人会社は、昭和五八年四月には、参加人組合及び参加人両支部の存在を認識し、これに所属する組合員の氏名を把握していた。

右(2)の事実からすると、参加人両支部の組合員らは、参加人組合等を通じて上告人会社に対し、チェック・オフの中止を申し入れたものというべきであり、上告人会社は、当該組合員らに対するチェック・オフを中止すべきであったのであって、旧ネッスル労組あるいは訴外組合とのチェック・オフ協定の存在を理由に、これを継続することは許されない。そして、右(3)の事実によれば、上告人会社が、昭和五八年四月以降も、右の中止の申入れを無視して右組合員らについてチェック・オフをし続け、しかも控除額を訴外組合の各支部へ交付し、又はその指定する銀行口座に振り込んだことは、参加人組合及び参加人両支部の運営に対する支配介入であるといわざるを得ない。したがって、右の行為が労働組合法七条三号の不当労働行為に当たるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。

同第二の二について

一  原審の適法に確定した事実関係の大要は、次のとおりである。

(1)  上告人会社は、旧ネッスル労組との間でチェック・オフ協定を締結していたが、同組合の内部抗争の結果、上告人会社内に共にネッスル日本労働組合を名乗る参加人組合と訴外組合という二つの労働組合及びそれぞれの支部が併存するに至った。(2) 上告人会社は、右併存状態を認識し、参加人組合からチェック・オフ協定の破棄を通告されるとともに、参加人両支部及びその組合員からチェック・オフの中止を申し入れられたのにもかかわらず、なおチェック・オフを継続した上、控除した組合費相当額を訴外組合の支部に交付した。(3) 主文記載の各再審査命令によって一部改められた後の各初審命令は、いずれも、右(2)の上告人会社の行為が支配介入の不当労働行為に当たるとした上で、その救済のため、チェック・オフの禁止並びに参加人組合及び参加人両支部を名あて人とするポスト・ノーティスを命ずるほか、参加人両支部に所属する組合員の給与から昭和五八年四月分以降チェック・オフした組合費相当額に年五分の割合による金員を付加して参加人両支部に支払うことを命じた(以下、右の参加人両支部への支払を命じた部分を「本件命令部分」という。)

二  原審は、本件命令部分につき、上告人会社の右(2)の行為が支配介入の不当労働行為に当たると認められるのであるから、このような不当労働行為がなかったと同様の事実上の状態を回復させるための救済措置として、右組合費相当額に年五分の割合による金員を付加して参加人両支部に支払うよう命ずることは、本件事実関係の下では、労働委員会にゆだねられた裁量権の範囲を逸脱し、救済措置として相当性を欠くということはできず、また、右の措置をもって、労働基準法二四条に反するということもできないとし、本件命令部分に違法はないと判断した。

三  しかし、原審の右判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。

労働委員会は、救済命令を発するに当たり、その内容の決定について広い裁量権を有するものであることはいうまでもないが、不当労働行為によって達成した侵害状態を除去、是正し、正常な集団的労使関係秩序の迅速な回復、確保を図るという救済命令制度の本来の趣旨、目的に由来する限界を逸脱することが許されないことも当然である。救済命令の内容の適法性が争われる場合、裁判所は、労働委員会の右裁量権を尊重すべきではあるが、その行使が右是認される範囲を超え、又は著しく不合理であって濫用にわたると認められるときには、当該命令を違法と判断せざるを得ない(最高裁昭和四五年(行ツ)第六〇号、第六一号同五二年二月二三日大法廷判決・民集三一巻一号九三頁参照)。

本件命令部分は、チェック・オフの継続と控除額の訴外組合の支部への交付という不当労働行為に対する救済措置として、上告人会社に対し、控除した組合費相当額等を組合員個人に対してではなく、参加人両支部へ支払うことを命じたものである。しかし、右チェック・オフにより控除された組合費相当額は本来組合員自身が上告人会社から受け取るべき賃金の一部であり、また、右不当労働行為による組合活動に対する制約的効果や支配介入的効果も、組合員が賃金のうち組合費に相当する金員の支払を受けられなかったことに伴うものであるから、上告人会社をして、今後のチェック・オフを中止させた上、控除した組合費相当額を参加人組合所属の組合員に支払わせるならば、これによって、右不当労働行為によって生じた侵害状態は除去され、右不当労働行為がなかったと同様の事実上の状態が回復されるものというべきである。これに対し、本件命令部分のような救済命令は、右の範囲を超えて、参加人組合と上告人会社との間にチェック・オフ協定が締結され、参加人組合所属の個々の組合員が上告人会社に対しその賃金から控除した組合費相当額を参加人両支部に支払うことを委任しているのと同様の事実上の状態を創りだしてしまうこととなるが、本件において、原審の認定事実によれば、右協定の締結及び委任の事実は認められないのであるから、本件命令部分により作出される右状態は、不当労働行為がなかったのと同様の状態から著しくかけ離れるものであることが明らかである。さらに、救済命令によって作出される事実上の状態は必ずしも私法上の法律関係と一致する必要はなく、また、支払を命じられた金員の性質は控除された賃金そのものではないということはいうまでもないが、本件命令部分によって作出される右のような事実上の状態は、私法的法律関係から著しくかけ離れるものであるのみならず、その実質において労働基準法二四条一項の趣旨にも抵触すると評価され得る状態であるといわなければならない。したがって、本件命令部分は、労働委員会の裁量権の合理的行使の限界を超える違法なものといわざるを得ない。

そうすると、原判決が本件命令部分を適法であるとしたのは、法令の解釈適用を誤ったものであり、右違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。この点をいう論旨は理由があり、原判決は右の部分につき破棄を免れず、右部分につき、上告人会社の取消請求を棄却した第一審判決を取り消し、上告人会社の請求を認容すべきである。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九四条、八九条、九二条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官三好達 裁判官大堀誠一 裁判官小野幹雄 裁判官高橋久子)

(別紙)

(一) 被上告人が中労委昭和五九年(不再)第四二号、第四三号事件につき昭和六〇年一二月八日付けでした再審査命令のうち、主文第二項及び東京都地方労働委員会の昭和五九年七月三日付け初審命令(都労委昭和五八年(不)第五六号、第六六号事件初審命令)の主文第二項のうちチェック・オフをした組合費相当額を被上告補助参加人ネッスル日本労働組合東京支部に支払わなければならないとする部分に係る上告人からの再審査申立てを棄却した部分

(二) 被上告人が中労委昭和六〇年(不再)第一六号ないし第一八号事件につき昭和六一年六月一八日付けでした再審査命令のうち、主文第二項及び静岡県地方労働委員会の昭和六〇年三月三〇日付け初審命令(静労委昭和五八年(不)第四号、第五号事件初審命令)の主文第二項のうちチェック・オフをした組合費相当額を被上告補助参加人ネッスル日本労働組合島田支部に支払わなければならないとする部分に係る上告人からの再審査申立てを棄却した部分

上告代理人青山周の上告理由

第一 〈省略〉

第二 原判決には、労働組合法第一六条および同法第七条第三号の解釈適用を誤った法令違背があり、これが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄されるべきである。

原判決は、チェック・オフに関して、「昭和五八年四月一二日には、補助参加人組合が客観的に独立した労働組合として訴外組合の組織とは別個に存在するに至っていることを認識していたと認められるから、右昭和五八年四月一二日以降、原告内に併存する補助参加人組合及び訴外組合の両組合に対して中立を保持する義務が生じ、従前のネッスル労組とのチェック・オフ協定に基づく組合費のチェック・オフの実施に当たっても、中立保持義務に反しない慎重な対応が求められる立場にあったというべきである」としたうえ、「昭和五八年四月分以降も、同組合支部の組合員の給与からチェック・オフした組合費を、供託に付することもなく、別組合である訴外組合の下部組織たる訴外組合東京支部に交付していたのであるから、原告のこのような措置が、補助参加人組合及びその下部組織たる補助参加人組合東京支部の存在やその団結権を否定し、その弱体化を図ろうとする意図を推認させるものであることは明らかであって、労働組合法七条三号の不当労働行為に該当するというべきである」(一八二〜一八四頁、同旨二一五〜二一六頁)と判示しているが、本件のチェック・オフ協定が有効であり、斉藤勝一らに効力が及んでいるにもかかわらず、これを否定したものであり、労働組合法第一六条および同法第七条第三号の解釈適用を明らかに誤っているうえ、上告人の行ったチェック・オフが不当労働行為に該当するとしても、その救済措置につき著しい裁量権の濫用があり、労働組合法第二七条の解釈適用を誤っている。

一 すでに述べたとおり、斉藤勝一らは、訴外組合の組合規約に定める脱退手続をとったことも、離脱の意思表示をしたことも、および、除名になったこともないのであるから、依然として、訴外組合の組合員であるから、補助参加人組合が、訴外組合とは別個の独立した労働組合として存在するか否かを問わず、斉藤勝一らは、訴外組合に対して組合費の支払義務を負担するのであって、上告人が、訴外組合とのチェック・オフ協定に従って、斉藤勝一らについても、その給与の支払に当って、組合費をチェック・オフしたうえ、これを訴外組合に交付することは、チェック・オフ協定という労働協約に定める義務の履行として正当であることは明らかである。

1 労働組合の組合員の組合費の支払義務は、労働組合における組合員の基本的義務の一つであり、組合員は、組合に加入することにより、組合の自治的規範である組合規約に定める組合費の支払義務を負担することになることは、いうまでもないことである。

また、組合費支払義務が、組合員たる資格の取得を前提として初めて発生するものである以上、組合員たる資格を喪失するまで義務が消滅しないことも、いうまでもないことである。

2 そして、使用者と労働組合との間で締結されたチェック・オフ協定には、取立委任の効果が認められ(山口浩一郎「労働組合法」二七五〜二七六頁参照)、さらに、労働基準法第二四条第一項但書に定める要件を満たすことによって、個々の組合員の支払委任の効果も認められることになり、チェック・オフ協定は、個々の組合員を拘束することとなると解すべきである。

すなわち、労働者は労働組合への加入に伴い、組合費支払義務を負うのであるから、チェック・オフをめぐる法律関係は、「組合が組合員の賃金を代理受領するという関係ではなく、組合が自己の組合費債権の取立を使用者に委任している関係」として把握すべきものである。

チェック・オフ協定は、賃金から組合費を天引・控除するために必要な手続であって、その点で労働者(組合員)が使用者に負っている債務を、労働基準法第二四条第一項但書の控除協定に基づいて控除されるという関係と類似しているといえる(ただチェック・オフの場合、組合員は使用者に対してではなく組合に対して債務を負っているという点で異なっているにすぎない)。

その意味でチェック・オフ協定に基づく組合費の控除については個々の組合員の同意は必要ではないのである(西村健一郎「協約自治とその限界」日本労働法学会誌六一号四三頁参照)。

3 また、チェック・オフ協定の効力については、「労働組合法第一六条に定める労働協約の組合員に及ぼす効力を組合員の個々の意思表示によって排除し得ないことはいうまでもないから債権者ら(注、組合員)が債務者(注、使用者)に対する右申入れをもって本件協約に基づく組合費の控除を免れることはできない」(水戸地裁土浦支部・昭和六〇年(ヨ)第二九号組合費控除禁止仮処分事件・昭和六一年一月二八日決定)というべきであり、また、「組合員各個が被告(雇傭主)に提出している組合費引去依頼書は、右チェック・オフ協定を確認する趣旨のものであり、組織員個別の引去依頼の撤回によって、直ちに右チェック・オフ協定が失効し、チェック・オフが許されなくなるとは解されない」(エッソ石油事件・大阪地方裁判所平成元年一〇月一九日判決・労働経済判例速報一三八三号三頁)のである。

この点につき、原判決は、斉藤勝一らが、上告人に対して、「チェック・オフ中止の要求」等をなしたことにより、上告人が同人らにつきチェック・オフすることが許されなくなるかのようにいうが(一八三頁)、右に述べたとおり、失当である。

斉藤勝一らは、訴外組合から脱退してその組合費の支払義務を免れるか、または、上告人と訴外組合とのチェック・オフ協定が効力を失うか、ということがない限り、チェック・オフを免れることはできないのである。

4 すでに述べたとおり、斉藤勝一らは、訴外組合から脱退・離脱したり、除名されたものは一名もないばかりか、自ら強く否定しているのであるから、斉藤勝一ら全員が、依然として訴外組合の組合員であり、労働組合の組合員の基本的義務の一つとして、訴外組合に対して、組合費の支払義務を負うことは明白である。

そして、上告人と訴外組合との間にはチェック・オフ協定が有効に現存しているのであるから、上告人は、訴外組合に対して、その組合費につき、その給与の支払に当って、組合費をチェック・オフすべき義務を負担していることも明白である。

したがって、上告人が、斉藤勝一らについて、訴外組合の組合費をチェック・オフしたことは、チェック・オフ協定という労働協約に定める義務の履行として正当である。

5 以上のとおりであるから、原判決は、労働組合法第一六条および同法第七条第三号の解釈適用を、明らかに誤っているものである。

二 さらに、原判決は、「補助参加人組合の下部組織たる補助参加人組合東京支部の組合員の給与からチェック・オフした組合費を訴外組合の下部組織たる訴外組合東京支部に交付した原告の措置が、補助参加人組合及びその下部組織たる補助参加人組合東京支部の存在やその団結権を否定し、その弱体化を図ろうとする意図を推認させるものとして、支配介入の不当労働行為に該当すると認められるのであるから、このような不当労働行為がなかったと同様の事実上の状態を回復させるための救済措置として、右組合費相当額に年五分の割合による金員を付加して補助参加人組合東京支部に支払うことを命ずることは、本件事実関係の下では、労働委員会に委ねられた裁量権を逸脱し、救済措置として相当性を欠くということはできないから、原告の右主張は採用することができない」(一八八頁)とし、また、「被告が、救済措置として、チェック・オフした組合費相当額を補助参加人組合島田支部に支払うことを命じたのは、著しく裁量権を濫用したものであって、違法である旨の原告主張が採用できないことは、第一の五の5において説示したとおりである」(二一九頁)と判示しているが、失当である。

1 仮に、上告人会社が行ったチェック・オフが、不当労働行為に該当するとしても、上告人会社の行為は、従業員の給与から訴外組合の組合費を控除したものであるから、その救済としては、これを当該従業員個々人に「支払う」ことで、必要かつ十分である。

上告人会社と斉藤グループとの間には、同グループの組合費に関するチェック・オフ協定が締結されていない(すなわち、取立委任が成立していない)のであるから、これを斉藤グループに支払うことを命じた中労委の命令は、労働基準法第二四条に違反する違法・不当なものであることは、明らかである。

2 さらに、上告人会社がチェック・オフした金員は、すでに訴外組合に支払済であることが明白であるにもかかわらず、上告人会社に対し同金額の支払を命じることは、上告人会社に対する金銭賠償を命じることと同様の結果になり、加えて、利息の支払まで明じることは、二重の金銭賠償を命じたこととなり、著しく不当である。

労働委員会の救済命令の目的は、原状回復にあり、懲罰的なものではないから、このような金銭賠償は、原状回復としては、許されないところである。

3 以上のとおりであるから、本件命令には、救済措置につき、裁量権の濫用のあることは明白である。

(添付書類省略)

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